「エステ未経験の35歳ですが、今から目指してもまだ間に合いますか」
美容業界専門のキャリアアドバイザーをしていると、この質問を本当によく受けます。
はじめまして、三浦沙織です。
美容専門学校を出てから大手エステサロン2社で12年働き、そのうち4年は店長として新人教育と採用面接を担当していました。
いまは美容業界に絞った転職支援をしながら、こうしたコラムを書いています。
先に答えを書いておきます。
30代・40代からでも、エステティシャンにはなれます。
面接官の側にいた私の実感でもありますし、調査の数字もそれを裏づけています。
ただ、転職がうまくいくかどうかを分けるのは、年齢そのものではありません。
この記事では、年齢の心配がいらない根拠と、その代わりに見ておきたいポイントを、現場の経験と公的なデータを交えてお話しします。
30代・40代からでもエステティシャンになれる理由
現役エステティシャンの8割以上が30代以上
エステティシャンというと、20代の若い女性の仕事というイメージを持たれがちです。
ところが実際の年齢構成を見ると、そのイメージとはだいぶ違います。
リクルートのホットペッパービューティーアカデミーが2026年4月に公表した美容サロン就業実態調査(2026年)では、現役エステティシャン500人の年代は次のとおりでした。
| 年代 | 割合 |
|---|---|
| 20代 | 16.2% |
| 30代 | 26.6% |
| 40代 | 30.4% |
| 50代 | 19.4% |
| 60代 | 6.8% |
| 平均年齢 | 42.1歳 |
※インターネット調査で、1%未満の年代は非表示
いちばん多いのは40代で、30代以上を合わせると8割を超えます。
平均年齢は42.1歳です。
30代・40代は出遅れた世代ではなく、現場の中心にいる世代だと思ってください。
ブランクから戻ってくる人も多い
同じ調査では、現役エステティシャンの49.8%が、エステの仕事を一度辞めたり離れたりした経験があると答えています。
産休・育休で休んだ期間は含まない数字です。
離れていた期間を見ると、3年以上5年未満が31.7%で最も多く、3年以上の人を合わせると65.4%になります。
数年のブランクを経て戻ってくるのは、この仕事ではごく普通のことです。
子育てが落ち着いてから復帰を考えている元エステティシャンの方も、気後れする必要はありません。
求人で年齢を理由に断ることは法律で原則禁止
「でも、求人に年齢制限があるのでは」と心配する方もいます。
これは法律で原則禁じられています。
厚生労働省の募集・採用における年齢制限禁止についての解説ページによると、労働施策総合推進法により、事業主は募集・採用で年齢制限を設けることを禁止されています。
求人票では年齢不問としながら、書類選考や面接で年齢を基準に採否を決めることも、法の規定に反するとされています。
例外もあります。
長く勤めてキャリアを積んでもらう目的で、若い人を経験不問で募集するケースなどは認められています。
なので「若手育成枠」のような求人があるのは事実です。
それでも、年齢だけを理由に門前払いされることは基本的にない、と考えて大丈夫です。
30代・40代で働く女性は当たり前になった
厚生労働省がまとめた令和7年版「働く女性の実情」のポイントでは、女性の労働力率は15〜19歳を除くすべての年齢階級で過去最高になりました。
結婚や出産で30代に下がる「M字型」のグラフも、台形に近づいていると書かれています。
| 年齢階級 | 2015年 | 2025年 |
|---|---|---|
| 30〜34歳 | 71.2% | 85.9% |
| 35〜39歳 | 71.8% | 82.7% |
| 40〜44歳 | 74.8% | 84.3% |
※資料出所は総務省「労働力調査」
10年前と比べて、30代・40代で働く女性ははっきり増えています。
私がこれまで見てきたサロンでも、この年代のスタッフはもう珍しい存在ではありません。
30代・40代が抱えやすい不安と現場で見てきた実情
相談を受けていると、不安の中身はだいたい似ています。
店長時代に30代・40代の新人を何人も受け入れてきた立場から、よく聞く不安と実際のところを並べてみます。
| よく聞く不安 | 現場で見てきた実情 |
|---|---|
| 体力が続くか | 立ち仕事なので最初の1〜2か月はきつい。手技に慣れて余計な力が抜けると楽になる |
| 年下の先輩とうまくやれるか | 技術は年下に教わることになる。素直に聞ける人ほど早く伸びる |
| 覚えることが多すぎないか | 量は多い。入社後の研修がどれだけ組まれているかで負担がまったく変わる |
| 収入が下がらないか | 未経験のスタートは前職より下がることもある。手当や昇給の仕組みを事前に確認したい |
| 家庭と両立できるか | 営業時間が夜や土日にかかるため、シフトの組み方しだい |
体力については、ごまかさずに書いておきます。
1日に何人もの施術に入り、立ったまま手を動かす仕事なので、楽ではありません。
それでも、30代後半で事務職から入ってきた後輩が「前の仕事より肩こりが減った」と話していたのを覚えています。
体の使い方を覚えてしまえば、年齢はそれほど関係ないというのが私の実感です。
年齢より大事なこと
ここからが本題です。
転職がうまくいく人とつまずく人を分けていたのは、年齢ではなく次の4つでした。
職場の雰囲気と人が合うか
先ほどの美容サロン就業実態調査では、現役エステティシャンに「働くうえで最も重要なこと」を1つだけ選んでもらっています。
1位は「働いているスタッフの人柄」で21.0%、2位の「給与」14.4%を上回りました。
エステの仕事を一度離れた経験がある人に理由を聞いた設問でも、1位は「サロンの雰囲気やテイストが合わなかった」の28.1%です。
さらに、一度離れてから戻ってきた人が勤め先を探すときに重視した点も、1位は「サロンの雰囲気やテイストが自分に合っている」の32.1%でした。
人間関係は、給与と同じかそれ以上に、続けられるかどうかを左右します。
見学や体験施術ができるなら、ぜひ行ってみてください。
スタッフ同士の声のかけ方、受付の空気感、店長の表情は、求人票からはまず読み取れません。
働き方の条件を最初にすり合わせる
同じ調査で、エステの仕事を離れた理由の2位は「勤務先のサロンでは仕事とプライベートの両立が難しいと感じた」の24.1%でした。
過去にエステティシャンだった人が「この条件なら復職してもいい」と答えた内容も、1位が「勤務時間を柔軟に選べる」60.4%、2位が「勤務形態が柔軟に選べる」50.4%です。
30代・40代は、子育てや親の介護など、自分だけでは動かせない予定を抱えやすい年代です。
遅番に週何日入れるか、土日はどのくらい出られるかを、入社してからではなく面接の段階ではっきり伝えておきましょう。
言いにくいかもしれませんが、ここを曖昧にしたまま入社すると、数か月後に苦しくなるのは自分です。
両立のための制度を公開しているかどうかも、会社を比べる材料になります。
たとえばたかの友梨ビューティクリニックの採用サイトでは、時短勤務は子どもが小学校に入学するまで、残業は小学校を卒業するまで免除できる(希望者が対象)と書かれています。
制度があっても使いにくい職場はあるので、実際に使っている人がいるかは面接で聞いてみてください。
研修が入社後にどう組まれているか
未経験の30代・40代にとって、いちばん頼りになるのは入社後の研修です。
「研修制度あり」と書いてある求人は多いので、中身まで確かめてください。
同じたかの友梨ビューティクリニックは、社員求人サイトで研修の流れも公開しています。
入社後に2週間の新人研修があり、3か月後に10日間、6か月後に5日間の研修が続きます。
授業料や技術に使う化粧品・場所の費用はかからず、研修のあいだも給与が支払われると書かれています。
ここまで具体的だと、入社後の半年が想像しやすくなります。
同社の店舗求人では在籍スタッフの声も読めます。
30代前半・勤続1〜3年未満の正社員の方は「覚えることも多く初めは不安だし大変」と書きつつ、意欲のある人は成長できる会社だと答えていました。
40代前半・勤続1〜3年未満の正社員の方は「何事も柔軟に考えて、自分で行動できる人が合っている」とのことです。
実際の雰囲気をつかみたい方は、たかの友梨の社員として働くスタッフの口コミが載っている求人ページも参考になると思います。
前職の経験を言葉にできるか
30代・40代の強みは、社会人として積んできた経験です。
接客、販売、事務、営業、子育て。
どれも、お客様の話を聞いて必要なことを提案するエステの仕事に生きてきます。
たかの友梨の採用サイトに載っている座談会では、前職が和洋菓子店の店長だった方が、29歳のときに「手に職を」と考えてエステティシャンを選んだと話しています。
その方は中途入社から勤続11年で、13店舗を統括する立場になっていました。
面接では「未経験です」で終わらせず、前の仕事で何をしてきたかをエステの仕事につなげて話してください。
採用する側にいたとき、私が一番知りたかったのはそこでした。
たとえば、販売職から転職する方ならこんな伝え方ができます。
前職では化粧品売り場で8年、お客様の肌の悩みを聞いて商品をご案内してきました。
一人ひとりに合わせて提案する仕事が好きで、今度は自分の手で直接きれいにするところまで関わりたいと思い、エステティシャンを志望しました。
経験した年数と、そこで身につけたことと、エステを選んだ理由。
この3つがそろっていれば、未経験でも面接官には十分伝わります。
応募前にやっておきたいこと
求人票と口コミで確かめること
応募する前に、次の点は確認しておくと安心です。
- 研修の時期と日数が具体的に書かれているか
- 研修中の給与や、研修費の自己負担の有無
- 固定残業代が含まれているか、超えた分は別に支払われるか
- 時短勤務や残業免除など、家庭と両立するための制度があるか
- 口コミを書いている人の年代と勤続年数
口コミは、自分に近い年代の人の声を探して読むのがおすすめです。
20代の新卒の感想と、40代で入った人の感想では、同じ職場でも見え方が違います。
面接で聞いておきたい質問の例
面接で聞きにくいことほど、入社後の満足度に直結します。
たとえば、こんな聞き方なら角が立ちません。
- 「30代・40代で未経験から入社された方は、いまどのくらいいらっしゃいますか」
- 「入社後、お客様に施術できるようになるまで、どのくらいの期間を見ておけばよいでしょうか」
- 「子どもの学校行事などで休みを希望する場合、どのくらい前に相談すればよいですか」
答えが具体的に返ってくる職場は、受け入れの体制ができていることが多いです。
資格は働きながら取れる
エステティシャンには、美容師のような国家資格はありません。
民間資格はありますが、入社前に取っておく必要はないと私は考えています。
日本エステティック協会のAJESTHE認定エステティシャンの受験資格を見ると、認定校で300時間以上のコースを修了するか、実務経験1年以上のどちらかを満たせばよいとされています(このほかにエステティシャンセンター試験の合格と正会員であることが必要です)。
つまり、サロンで1年働けば受験への道が開けます。
スクールに通う費用と時間をかけるより、研修の厚いサロンに入って働きながら取るほうが、30代・40代には現実的です。
まとめ
30代・40代からエステティシャンを目指すのは、遅くありません。
現役エステティシャンの8割以上は30代以上で、求人で年齢を理由に断ることは法律で原則禁止されています。
年齢よりも気にしてほしいのは、次の4つです。
- 職場の雰囲気と人が自分に合うか
- 家庭の予定も含めて、働き方の条件をすり合わせられるか
- 入社後の研修が具体的に組まれているか
- 前職の経験をエステの仕事につなげて話せるか
店長をしていた頃、30代後半で入ってきたあの後輩は、2年後にはお客様から指名をもらうようになっていました。
「もっと早く来ればよかった」と笑っていたのを、いまでもよく覚えています。
迷っているなら、まずは気になるサロンの求人と口コミを読むところから始めてみてください。
