インドで教わった「食後の血糖値」との付き合い方

はじめまして、アーユルヴェーダ・ウェルネスライターの橘美和です。
化粧品メーカーで研究開発の仕事をしていましたが、20代後半で体調を崩したことをきっかけに、南インドのアーユルヴェーダ施設へ渡りました。

3か月間、パンチャカルマという浄化療法を受けながら、現地の医師や施術者から食事と体質についてたくさんのことを教わりました。
中でも印象に残っているのが、「食後の血糖値」との向き合い方です。

日本にいた頃の私は、健康診断の数値さえ正常なら大丈夫だと思い込んでいました。
でも、インドで学んだのは、健診の数値だけでは見えない「食後の変化」にこそ注意を払うべきだということでした。

現地の先生に「あなたは食後にどんな体調変化がありますか」と聞かれたとき、答えに詰まってしまったのを覚えています。
それまで、自分の食後の体調をきちんと観察したことがなかったのです。

この記事では、インドで教わった食後血糖値との付き合い方と、帰国後も続けている日々の工夫についてお伝えします。
健診の結果に一喜一憂するだけでなく、食後の自分の体調にも目を向けてみたい方に、参考にしていただけたら嬉しいです。

健診の数値だけでは見えない「食後の血糖値」

血糖値というと、多くの方が健康診断の「空腹時血糖値」や「HbA1c」を思い浮かべるかもしれません。

でも、これらの数値が正常範囲でも、食後だけ血糖値が大きく上下している人は少なくありません。
食後1〜2時間の間に血糖値が140mg/dL、時には180mg/dLを超えるまで急上昇し、そのあと急降下する状態は「血糖値スパイク」と呼ばれています。

健康日本21アクション支援システムでも、血糖値の基準値とあわせて、食後の血糖コントロールが体への負担に関わることが取り上げられています。
空腹時血糖値やHbA1cは、いわば「平均点」のようなものです。
一時的な急上昇や急降下があっても、平均をとれば正常範囲に収まってしまうことがあります。

この急上昇と急降下を繰り返す状態が、血管の内側に負担をかけると言われています。
毎日のことなので、一回一回の負担は小さくても、それが何年も積み重なっていくと考えると、決して軽視できるものではありません。
健診で「異常なし」と言われて安心していた私にとって、この話は正直かなり衝撃的でした。

思い当たる症状がないか、簡単にチェックしてみてください。

  • 食後に強い眠気やだるさを感じる
  • 食後1時間前後でめまいや動悸、冷や汗が出ることがある
  • 空腹になると急にイライラしたり、集中力が落ちたりする
  • 甘いものを食べたあと、しばらくしてまた強い空腹感に襲われる

私自身、インドに行く前はまさにこの状態でした。
ランチのあとは決まって猛烈な眠気に襲われ、「食後は眠くなるものだ」と思い込んでいました。
午後の会議で舟をこいでしまい、上司に注意されたことも一度や二度ではありません。

今振り返ると、あれは体からの小さなサインだったのだと思います。
健診の数値が正常だったので、当時はまったく疑っていませんでした。
数値だけを見て「自分は健康だ」と安心してしまうのは、実はもったいないことなのかもしれません。

アーユルヴェーダ的な体質と、食後の反応の違い

アーユルヴェーダでは、人の体質を「ヴァータ」「ピッタ」「カパ」という3つのドーシャ(生命エネルギー)のバランスで捉えます。

  • ヴァータ:風と空のエネルギー。動きや変化を司り、体型は細身で冷えやすい傾向がある
  • ピッタ:火と水のエネルギー。消化力や代謝を司り、体温が高めで食欲が旺盛な傾向がある
  • カパ:地と水のエネルギー。安定や潤いを司り、体型はがっしりめで代謝が緩やかな傾向がある

現地の先生からは、どのドーシャが優勢かによって、食後の反応の出方も変わってくると教わりました。

たとえばカパ体質の人は、もともと代謝がゆるやかなため、糖質を摂りすぎると眠気やだるさが出やすいとされています。
一方でヴァータ体質の人は、消化力が不安定なため、食事の時間がバラバラだったり、冷たいものを摂りすぎたりすると、消化不良から不調につながりやすいそうです。

私自身はカパの要素が強い体質と診断されました。
言われてみれば、昔から甘いものを食べたあとの眠気がとりわけ強かったように思います。
自分の体質を知ってから、「なぜ自分だけ食後にこんなに眠くなるのか」という長年の疑問が、少し腑に落ちました。

一方、ピッタ体質の同期生は、私とはまったく違う悩みを話してくれました。
もともと消化力が強く食欲も旺盛なため、量を食べすぎてしまいがちで、食後に胃もたれのような不快感が出やすいそうです。
同じ「食後の不調」でも、体質によって出方も対策も変わってくるというのが、アーユルヴェーダらしい視点だと思います。

自分の体質がわからないという方は、まず1週間ほど「食後にどんな変化があったか」をメモしてみることをおすすめします。
眠気なのか、胃もたれなのか、それとも特に変化を感じないのか。
記録を続けるだけでも、自分の傾向が見えてきます。

体質診断は現地の専門家による問診が基本ですが、日本国内でも日本アーユルヴェーダ学会のような団体が学術的な情報を発信しています。
興味を持たれた方は、自己判断だけに頼らず、こうした団体の情報や専門家の意見も参考にしてみてください。

インドで教わった「食べる順番」という知恵

アーユルヴェーダには、「アグニ」という消化力を表す考え方もあります。
食べ物をどれだけ効率よく消化し、栄養に変えられるか。
このアグニの状態を整えることが、体質改善の基本とされています。

現地の先生に最初に教わったのは、食べる順番でした。
生野菜や果物から食べ始め、そのあとに火を通した野菜、最後にお米や豆といった炭水化物を食べる。
この順番を守るだけで、消化にかかる負担がまったく違うのだと説明されました。

日本の栄養指導でも、野菜から食べ始める「ベジファースト」は血糖値の急上昇を抑える方法として知られています。
アーユルヴェーダの知恵と、現代栄養学が同じ結論にたどり着いているのは、私にとって興味深い発見でした。

もうひとつ、現地で繰り返し教わったのが「よく噛むこと」の大切さです。
一口につき30回以上噛むよう指導され、最初は正直かなり面倒に感じました。

でも続けているうちに、少量の食事でも満足感を得られるようになりました。
早食いの癖がある方は、噛む回数を意識するだけでも、食後の変化が違ってくるはずです。

参考までに、私が帰国後によく作る昼食の一例を紹介します。

まず千切りキャベツとミニトマトのサラダを先に食べ、次に蒸し鶏や豆腐などのたんぱく質を挟み、最後に玄米ご飯を少量。
品数は多くありませんが、順番を意識するだけで、食後の眠気がずいぶん軽くなりました。

血糖値の急上昇を穏やかにする、日々の工夫

インドから帰国したあとも、私は次のような工夫を日々の食事に取り入れています。

工夫具体的な方法期待できること
食べる順番野菜→たんぱく質→炭水化物の順に食べる糖の吸収スピードを緩やかにする
炭水化物の選び方白米より玄米や雑穀米を選ぶ食物繊維により消化がゆるやかになる
酢の活用酢の物やドレッシングを1品加える食後の血糖値変化を穏やかにするとされる
食後の軽い運動食後15〜30分以内に散歩する筋肉が糖を取り込みやすくなる

どれも特別な道具や時間を必要としない、小さな工夫ばかりです。
それでも続けていると、食後の眠気やだるさを感じる頻度が明らかに減りました。

済生会が公開している解説でも、食物繊維を先に摂ることや、食後の軽い運動が血糖値の急上昇を抑える方法として紹介されています。
インドで教わった知恵と、日本の医療機関が発信している情報に重なる部分が多いことに、あらためて気づかされます。

酢の活用については、難しく考えなくて大丈夫です。
私がよくやるのは、きゅうりとわかめの酢の物をあらかじめ作り置きしておき、食事の最初の一品として添えるだけの方法です。
市販のポン酢やドレッシングに酢を少し足すだけでも、手軽に取り入れられます。

外食が続くときは、この4つをすべて実践するのが難しいこともあります。
そういうときは、「炭水化物を少し残す」「食後に一駅分だけ歩く」など、できることをひとつだけ選ぶようにしています。

一度にすべてを完璧にやろうとしなくて大丈夫です。
まずは「食べる順番」だけでも意識してみると、続けやすいと思います。

アーユルヴェーダが伝統的に頼ってきた植物

インドでの滞在中、先生から「コタラヒムブツ」という植物の話を聞く機会がありました。

スリランカに自生するつる性の植物で、アーユルヴェーダでは3,000年以上前から、茎や根を煎じたお茶として使われてきた歴史があります。
現地の言葉で「神の恵み」を意味する名前を持つと聞いて、それほど大切にされてきた植物なのだと実感しました。

コタラヒムブツには、サラシノールやコタラノールという成分が含まれています。
これらは糖の分解に関わる酵素の働きに関係するとされ、伝統的に「食後の変化が気になるときに飲むお茶」として親しまれてきました。

現地の先生いわく、コタラヒムブツはスリランカの標高が高い地域にしか自生しない、希少な植物なのだそうです。
自生地が限られているうえ、スリランカ政府が輸出を厳しく管理していることもあり、現地でも簡単に手に入るものではないと聞きました。

実際に現地の市場を訪れたとき、コタラヒムブツの茶葉を扱っている店はごくわずかでした。
観光客向けのお土産物としてではなく、地元の人が体調管理のために日常的に買い求めていく様子が印象的でした。

店主に「これは毎日飲むものなのか」と尋ねたところ、「食事の後、お茶代わりに飲む家庭が多い」と教えてくれました。
特別なときだけ飲む薬のようなものではなく、日常に溶け込んだ習慣なのだと知り、あらためて興味を持ったことを覚えています。

現代のサプリメントとして受け継がれる知恵

こうした伝統的な植物の知恵は、現代では飲みやすいサプリメントの形でも受け継がれています。
毎日お茶を煎じるのは、忙しい日々の中では正直なところハードルが高いものです。

日本の企業では、株式会社HBS(HEALTH&BEAUTY SUPPORT)が「コタラヒムα」という商品でコタラヒムブツを取り上げています。
HBSがハイエンドな一品として紹介しているコタラヒムαのページでは、原料となる植物の希少性や、スリランカでの調達の背景について詳しく紹介されています。

インドの先生から聞いた「手に入りにくい植物」という話は、こうした国内の紹介記事の内容とも重なっていて、現地で聞いた話が決して大げさではなかったのだと、あらためて実感しました。

なお、サラシア属の植物由来成分は、国内でトクホ(特定保健用食品)として認可された例もあります。
ただし、これはコタラヒムαとは別の商品によるものです。
同じ仲間の植物であっても、商品ごとに配合や許可の状況、成分量は異なるため、購入前にはそれぞれの商品の表示をきちんと確認することをおすすめします。

サプリメントを選ぶときは、パッケージの雰囲気や価格だけで判断せず、原料がどこで採れたものか、どんな伝統に基づいているのかまで調べてみると、納得感を持って続けやすくなると思います。

血糖値ケアは「置き換え」ではなく「積み重ね」

ここまでお伝えしてきた工夫や植物の力は、どれも生活習慣の土台があってこそ効果を発揮するものだと、私は考えています。

特定の食品やサプリメントを摂ったからといって、これまでの食生活を変えずにいて良いわけではありません。
日本糖尿病学会のような専門機関も、食事療法や運動療法を基本とした継続的な取り組みの重要性を伝えています。

持病がある方や、すでに血糖値に関する指摘を受けている方は、新しい食品やサプリメントを試す前に、かかりつけ医に相談しておくと安心です。
自己判断で薬を減らしたり、治療を中断したりすることは避けてください。
とくに血糖値やインスリンに関わる薬を服用中の方は、植物由来の成分であっても、飲み合わせについて必ず確認してもらうようにしてください。

アーユルヴェーダも現代医療も、体を大切にするための知恵という意味では、同じ方向を向いていると私は感じています。
どちらか一方に偏るのではなく、両方の良いところを取り入れる姿勢が、結果的に一番続けやすいはずです。

インドでの3か月間、私が一番学んだのは、特効薬のような近道はないということでした。
毎日の小さな選択の積み重ねが、半年後、1年後の体調につながっていく。
地味に聞こえるかもしれませんが、これが一番確かな方法だと、今は実感しています。

まとめ

食後の血糖値は、健康診断の数値だけでは見えてこない、もうひとつの健康のバロメーターです。

  • 自分のアーユルヴェーダ的な体質の傾向を知っておく
  • 食べる順番を野菜からにする
  • 白米より色の濃い炭水化物を選ぶ
  • 食後に軽く体を動かす
  • 気になる場合は専門家に相談する

インドで教わった知恵の多くは、特別な道具も難しい理論も必要としない、日々の小さな積み重ねでした。

明日の食事から、ひとつだけでも取り入れてみてください。
食後の体調が、少しずつ変わっていくのを感じられるはずです。

最終更新日 2026年7月22日 by isujin


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