「電気代が高いので、オール電化はもうやめたほうがいい」
「いや、ガス代もあがっているから、今こそオール電化だ」
このどちらの声も、現場では同じ週に耳にします。住宅省エネアドバイザーの森山健司です。元はハウスメーカーで10年営業をしていましたが、独立してからは省エネリフォームとZEH導入の相談を年間100件以上受けています。自宅にも太陽光5.6kWと蓄電池9.8kWh、エコキュートを導入して6年目。電気代の請求書を実際に見続けてきた立場から、オール電化の現実を本音でまとめます。
メーカーや販売店の営業トークを抜きにして、メリットとデメリットを並べていきます。「結局やめたほうがいいのか、それとも今こそ導入すべきなのか」を、自分の家に当てはめて判断するための材料として読んでもらえれば嬉しいです。
Contents
オール電化とは何か、まずは前提を揃える
オール電化住宅とは、給湯・調理・冷暖房といった家のエネルギーを電気だけでまかなう住まいを指します。ガスや灯油は使わず、ガス管の引き込みもありません。
中身を分解すると、主に次の3つの設備で構成されています。
- エコキュート(ヒートポンプ式の電気給湯機)
- IHクッキングヒーター
- エアコンや電気床暖房などの電気式冷暖房
このうち、オール電化の経済性を語るうえで一番効いてくるのがエコキュートです。空気の熱を圧縮して取り込み、1の電気エネルギーから3倍前後の熱エネルギーを生み出します。一般財団法人ヒートポンプ・蓄熱センターによると、エコキュートの累積出荷台数は2025年3月時点で1,000万台を突破。すでに特殊な機器ではなく、新築住宅の標準装備に近い存在です。
ガス併用住宅との根本的な違いは、家の中に「燃焼」が一切ないこと。火を使わないという一点で、安全性も光熱費の構造もガス併用とは別物になります。
現場目線で見たオール電化のメリット
ここからは、私が実際に現場でお客さんと話していて「これは想像以上に効いている」と感じる点を並べます。
光熱費の基本料金がひとつに集約される
ガス併用住宅だと、電気とガスでそれぞれ基本料金がかかります。オール電化なら電気の基本料金だけ。たとえば都内でガスの基本料金が月1,200円前後だとすると、年間14,400円が単純に消えます。これは小さな違いに見えて、20年住めば30万円弱の差です。
夜間の安い電気で給湯コストを抑えられる
オール電化向けの電気料金プランは、夜間が安く、昼間が高いという構造が一般的です。エコキュートは夜のうちに翌日分のお湯を沸かしておく仕組みなので、もっとも安い時間帯に給湯コストを集中させる設計になっています。私の自宅では、給湯にかかる電気代は月平均で1,800円ほど。冬場でも3,000円を大きく超えることはほとんどありません。
火を使わない安全性は想像以上
これは、子育て世帯と高齢者がいる家庭でとくに評価される点です。鍋を空焚きしても自動で電源が切れる、衣類の袖口に火が燃え移らない、夏場でもキッチンが暑くならない。私自身、現場で「コンロからの出火で部分焼きが起きたお宅」を数件見てきましたが、IHならまず起こりません。心理的な安心感は数字に出にくいですが、確実な価値です。
災害時の復旧が早いという事実
「オール電化は災害に弱い」という言説を耳にします。しかし、復旧速度の点で見ると、電気はもっとも早く戻るインフラです。阪神淡路大震災の神戸市の例では、電気の復旧に7日かかったのに対し、水道は90日、ガスは85日かかりました。災害時に止まることは前提にしつつ、戻ってくるのが一番早いのは電気です。
さらに、エコキュートの貯湯タンクには370〜460Lの水が常時入っているため、断水時の生活用水としても機能します。私が現場で説明するときは「タンクは小さな給水車」と表現しています。
室内の空気がクリーン
ガスコンロの燃焼で発生する水蒸気と二酸化炭素は、室内の空気環境に少なからず影響します。気密性の高い現代の家ほど、この影響は無視できません。IHはこの燃焼ガスを家の中に出さないため、結露や換気の負担も小さくなります。喘息のある家族がいる場合、これは検討材料に入ってきます。
隠さずに伝えたいオール電化のデメリット
ここからは本音で書きます。営業の場ではあまり強調されない部分です。
初期費用は重い、これは事実
エコキュートの本体と工事費を合わせると、機種によりますが40〜80万円が相場。IHクッキングヒーターも工事込みで20万円前後。両方そろえると100万円前後の初期投資が必要です。さらに、オール電化対応の電気契約に切り替えるためのブレーカー工事や配線工事が乗ることもあります。
ただし、2026年は補助金が手厚いです。経済産業省の給湯省エネ2026事業では、エコキュート1台あたり基本7万円、性能加算で最大10万円、さらに既存の電気温水器を撤去するなら追加で4万円が出る設計。トータルで14万円まで補助されるケースもあります。これを使わない手はありません。
電気料金単価の上昇は無視できない
ここ数年、電気料金は確実に上がっています。2021年頃まで27〜28円/kWh台だった電力量料金が、2022年には34円/kWhを超える水準まで跳ね上がりました。資源エネルギー庁の試算によれば、特定の条件下ではオール電化住宅の月の電気代が10万円を超えるケースも報告されています(ひと月の電気代が10万円超え!?オール電化住宅の電気代を考える)。
電気料金単価が上がると、給湯や調理に使う電気の総量も同じだけ高くつきます。「導入時のシミュレーションよりも実際の請求が高い」という相談は、この3年で明らかに増えました。
停電時はすべて止まる
これがオール電化の弱点として一番大きい点です。電気が止まれば、IHもエアコンもエコキュートも動きません。
ガス併用住宅なら、停電してもガスコンロでお湯を沸かせて、ガス給湯器のなかには停電時に使える電池駆動モデルもあります。オール電化はそうした「逃げ道」がない構造です。
在宅ワーク家庭は不利になりがち
オール電化向けプランは「夜安く・昼高い」が原則。ところがコロナ以降、自宅で日中を過ごす家庭が一気に増えました。昼の電気代が割高なプランで、昼間にエアコンも調理も動かすと、電気代は想像以上に膨らみます。私が相談を受けるなかで「想定より2万円高い」と困っているお宅は、ほぼ全員、在宅ワーク世帯でした。
IH非対応の調理器具を買い替える必要がある
これは小さな話に見えて、引っ越し直後にお客さんから「鍋が使えない」と連絡をもらうことがあります。鉄やステンレスは使えますが、土鍋や底が薄いアルミ鍋はIH非対応のものが多いです。お気に入りの鍋を諦める覚悟がいるかどうか、意外と気持ちに響きます。
ガス併用住宅との10年スパンでの比較
「で、結局どっちが安いの?」という質問に、断言できる人はいません。電気もガスも単価が動きますし、家族構成によっても結果が変わります。それでも、現場で使っているざっくりとした目安を表にしておきます。
| 給湯方式 | 初期費用の目安 | 年間給湯コストの目安(4人家族) | 10年トータルの傾向 |
|---|---|---|---|
| エコキュート(オール電化) | 40〜80万円 | 2.5〜4万円 | 補助金活用+太陽光ありなら有利 |
| 都市ガス+エコジョーズ | 15〜25万円 | 5〜7万円 | 都市ガスエリアでは僅差で有利 |
| プロパンガス+ガス給湯器 | 15〜25万円 | 10〜15万円 | エコキュート切り替えで年6万円前後の節約余地 |
太陽光発電がない都市ガスエリアの戸建てでは、初期費用の重さがあるため、10年トータルでガス併用が安く収まるケースもあります。一方、プロパンガスエリアの家ならエコキュートに切り替えるだけで年間6万円前後の節約余地が出ます。
つまり「どっちが得か」はエリアと家族構成で変わるのが現実。「全国一律でオール電化が得」は、もう過去の話です。
太陽光発電・蓄電池との組み合わせで景色が変わる
ここまでの内容を踏まえると、オール電化単体で電気代の高騰に立ち向かうのは年々厳しくなっています。ですが、太陽光発電と蓄電池をセットにすると、景色が一変します。
自家消費が進めば電気代の高騰が怖くなくなる
我が家の電気使用量は年間およそ5,800kWh。そのうち約65%は屋根に乗っている太陽光パネルでまかなっています。残りの35%は夜間の電気で買電する形ですが、それでも年間の電気代は12万円程度に収まっています。電気料金単価がいくら上がっても、自家消費している分は影響を受けません。
蓄電池があれば停電リスクを吸収できる
オール電化最大の弱点である停電に対して、蓄電池は唯一の保険です。9.8kWhクラスがあれば、冷蔵庫・照明・スマホ充電・夏場のエアコン1台程度の運用で1日以上は持ちます。災害時に「ガス併用ならよかった」と感じる場面を、蓄電池がほぼ消してくれる印象です。
「省・創・蓄」を一気通貫で扱える会社を選ぶ
販売店選びは、ここから先がもっとも差が出るところです。エコキュート単体、太陽光単体、蓄電池単体で別々の業者にお願いすると、保証もメンテナンスも分散して、後々もめます。「省エネ・創エネ・蓄エネ」を一社で提案・施工してくれる業者なら、機器同士の相性や運用設計まで一貫した話ができます。
私が研修やセミナーで参考事例として紹介しているのが、日本住宅性能検査協会が運営する「太陽光発電アドバイザーのいるお店」の登録店一覧です。たとえば東京・勝どきに本社を置く株式会社エスコシステムズの登録店紹介ページでは、太陽光発電・蓄電池・オール電化を一気通貫で扱っており、認定アドバイザー(資格番号公開)の在籍も第三者機関のサイトから確認できます。「省・創・蓄」を一社で完結させたい人にとって参考になる事例です。
オール電化が向く家庭・向かない家庭
「結局、自分の家には合うのか」を判断する目安として、現場で使っている指標を表にしておきます。
| タイプ | オール電化との相性 | 理由 |
|---|---|---|
| プロパンガスエリアの戸建て | 高い | 給湯費の差が大きく、切り替え効果が出やすい |
| 太陽光発電を設置予定または既設 | 高い | 自家消費で電気代高騰の影響を抑えられる |
| 高気密・高断熱の新築住宅 | 高い | 暖房負荷が小さく、電気だけでも快適 |
| 都市ガスエリアの中古戸建て | 中程度 | 初期費用と効果のバランスを要シミュレーション |
| 在宅ワーク中心の家庭 | 低め | 昼間電力単価の影響を受けやすい |
| 築年数が古く断熱性能が低い住宅 | 低め | 暖房効率が悪く電気代がふくらむ |
向かない家庭にオール電化を導入しても、住んでから後悔するパターンが圧倒的に多いです。営業トークだけで判断せず、自分の家の条件を冷静に当てはめてください。
失敗しない販売店選びのチェックポイント
最後に、販売店を選ぶときに確認してほしい点をまとめます。私が現場で繰り返し言っている内容ですが、ここを押さえるだけでトラブルが激減します。
- 太陽光発電アドバイザーや住宅省エネルギー技術者など、有資格者が常駐しているか
- 給湯省エネ2026事業などの補助金申請を自社で代行してくれるか
- 機器メーカー名と型番、性能加算の対象機種かどうかを明示してくれるか
- 10年・15年の長期保証と、自社施工部隊によるアフター対応があるか
- 過剰な値引きトークやその場での契約を迫らないか
最初の項目はとくに大事です。日本住宅性能検査協会が認定している「太陽光発電アドバイザー」は、太陽光・蓄電池・オール電化の知識を体系的に問う資格で、登録店には認定番号付きのアドバイザーが在籍しています。資格者がいるかどうかは、業者の知識レベルを見極める一番手早い指標です。
まとめ
オール電化は、万能ではありません。電気料金単価が上がっている2026年現在、単体での経済メリットは10年前ほど際立たなくなっています。
それでも、太陽光と蓄電池をセットにできる住宅、プロパンガスエリアの家、高気密高断熱の新築住宅であれば、いまも強力な選択肢です。選ぶときに大事なのは次の3点に集約されます。
- 自分の家の条件と相性を冷静に見ること
- 補助金を最大限使い切ること
- 一気通貫で提案できる、有資格者のいる販売店を選ぶこと
「オール電化はもう古い」と切り捨てるのも、「絶対に得だ」と盲信するのも、現場の感覚からするとどちらもズレています。冷静に条件を整理して、自分の家にとってベストな組み合わせを選んでください。この記事がその判断材料になれば、書いた甲斐があります。
最終更新日 2026年4月29日 by isujin








